工業都市ノリリスクの汚染
撮影者:エレーナ・チェルニショヴァ(Freelance )

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17万5300人の人口を抱えるノリリスクは、北極圏最大の都市のひとつだ。この都市の工場は、世界最大の冶金コンビナートと鉱山を維持し続けるというたったひとつの目的のため、存在している。このコンビナートはロシアのGDPの2パーセントを支える。

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鉱山や工場、ノリリスクの近代都市の大部分は、グラーク(旧ソ連内務人民委員部)から送られてきた囚人によって建設された。20年間にわたり、60万人を超える囚人たちが、ノリリスクで強制労働をした。アナは、ノリラーグ強制労働キャンプで10年間働かされた。労働期間中、彼女のウクライナの家は戦争で破壊され、家族や親せきとも連絡が取れなくなってしまったため、解放された後も行き場がなかった。そして、ノリリスクで生涯を送ることにした。

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ノリリスク・ニッケルは世界のニッケルの41パーセント、パラジウム17パーセントを生産する世界最大手の企業だ。ノリリスクの鉱山は、6つの地下坑道に分かれ、3つの工場が稼働している。鉱物を溶解する場所には、ガスが充満している。労働者たちはマスクをするか、炭素フィルターに繋がっているチューブで定期的に呼吸をしている。

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二酸化硫黄は、この地域で酸性雨が降る一番の原因だ。酸性雨は野生動物や植物、水などの汚染に深刻な被害をもたらしている。ノリリスク近郊にある10万ヘクタールのツンドラ地帯の植物が死滅の危機にある。

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ノリリスクは世界で最も汚染された都市のトップ10入りを果たした。ロシアではワースト1だ。冶金コンビナートからは、毎年約200万トンの有毒ガスが大気中に排出される。年間200日以上、汚染数値の限界を超えている。

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ノリリスクの住民の平均寿命は、他のロシアの地域と比べ、10年も短く、約60歳だ。大気汚染は、肺や呼吸器、消化器の病気やがんの原因となっている。それだけでなく、様々なアレルギーやぜんそく、心臓病、不整脈、皮膚病や精神病を引き起こしている。

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ノリリスクの多くの建物がこのような集合住宅だ。各戸12~17平方メートルくらいのスペースが割り振られている。この手の建物は「ゴスティンカ」と呼ばれ、新規移住労働者のための温暖な住居という意味をもつ。多くの人にとって、この住居が終の棲家になる。

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新市街を形成する建物は、この地域の強風から住人を守るように設計されている。住居は密集して中庭を囲むように建てられている。きれいな空気が循環するようにするためと、移動時に遠回りをしないで済むよう、建築家たちは建物の間に狭い通り道を造った。

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ノリリスクの冬は平均でマイナス30度だ。マイナス気温は年間280日にも及び、130日以上が吹雪になる。霜が降りている期間はマイナス40度以下になることもしばしばで、家から排出される蒸気が、街中で濃霧に変わる。

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ノリリスクの直面する一番の問題は、建物のメンテナンスだ。地球温暖化や環境汚染、下水道設備の放置により、永久凍土が溶け始めた。ほとんどが杭工法の建築のため、凍土が溶けると杭が不安定になり、建物を支える壁が動き、崩壊する。現在、ノリリスクの7パーセントの建物が崩壊の危機にある。

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日中も太陽が沈んだままの状態を極夜という。ノリリスクでは、極夜が11月の終わりから翌1月の終わりまで、約2か月間続く。研究によると、人体はこのような過酷な状況に、自然には適応できないという。ノリリスクでは、疑似太陽光を照射する紫外線ランプがある家庭が多い。

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ノリリスクの会員制クラブ「ヴァルルス」。クラブ内には、氷に穴があけられたプールがあり、人々はそこで泳ぐ。気温は気にしていない様子だ。気温が下がれば下がるほど、人々はこぞってプールにやってくる。泳いだ後は、スチームサウナで暖まる。

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子どもが遊べる施設。寒さが原因で、子どもが外出を許される機会は少ない。数か月を屋内で過ごすことを余儀なくされる子どももいる。そのため、このような子どものための広大な屋内施設がつくられ、その中で自転車に乗ったり、走ったりして遊ぶ。

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精神的にも冬を乗り切るのはきつい。「家庭-仕事―家庭」という生活のリズムを崩さなければいけないことも大変だ。厳冬の状況下では、野外活動は禁止されるため、日常生活の大半は、密室の中で営まれる。

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ノリリスクの特徴として挙げられるのは、街中でホッとできるような緑地が不足していることだ。ノリリスク中心部の南にあるドルゴア湖一帯の工業地帯が、彼らにとってのレジャースポットになっていて、ピクニックやバーベキュー、日光浴や水泳、初デートに訪れる。