屋内遊技場「ペップキッズ郡山」で、砂遊びをする子どもたち。福島県郡山市。2013 年1 月14 日
屋内遊技場「ペップキッズ郡山」で、砂遊びをする子どもたち。福島県郡山市。2013 年1 月14 日 Photo by Ryuichi HIROKAWA

福島は子どもにとっても安全であり、不安だと言う人は「復興の妨げ」だという雰囲気の中、気持ちを押しつぶされそうになっている母親たちがいる。今母親たちの本音を知るためにアンケートをおこなった。DAYS募金が支援する福島の子どもの保養施設「沖縄・球美(くみ) の里」で母子保養した母親たちに、事故から5年目の今年 4月18日~25日にアンケートを実施。母親約1100人のうち354人が回答を寄せてくれた。回答者たちは子どもを保養に出したことのある人なので、比較的放射能には警戒意識が高い人々といえるが、事故5年たったあとも危機感をもち続ける人が多いことに驚く。

写真・文/広河隆一
Photo & Text by Ryuichi HIROKAWA

子どもの食べ物への注意

子どもの食べ物への注意事故から5年たっても、県産品を警戒する人が多い。水もペットボトルしか飲ませない人も。記述回答でいちばん多いのは、検査済み食品しか食べさせない人。何らかの注意をしている人の数は合計で77%にのぼる。

◆店の食品(検査済みなので)は食べさせているが、近所等の自家菜園の野菜は未検査のものは食べさせないようにしている。防災無線で、季節の山菜、山のもの、川魚など、線量が高いと聞くので、それらは口にしていない。
◆肉、魚、きのこ、山菜、木の実類、柿、桃などは食べさせない。
◆ほとんど生協で食べ物を買っている(きちんと調べてくれているため)。
◆会津産(実家)は食べさせているが、いわき産、茨城産は食べさせないようにしている(※給食は食べています) 。
◆放射能検査をしていない近隣県産は避けている。
◆仕方なく中学校の給食の白米と牛乳は県内産を食べさせているが、それ以外は食べさせないようにしている。
◆県産品については食べさせないようにしている。家で食べるもの、飲むものは西日本のものを極力選んでいる。
◆野菜は会津、いわき産は食べさせているが、他の地域の県内産は食べさせないようにしている。
◆野菜、米(県内)は食べさせているが、貝類(県内)は食べさせないようにしている。
◆水はミネラルウォーターを。野菜などなるべく県産品ではないものを。
◆一般的に売られているもの。山菜、きのこ類は気をつけているが、本音を言えば、防ぎようがないと思っている。
◆原発事故後しばらくは県産品を食べさせないようにしていましたが、県外産の高くてしなびた野菜を買うのに疲れました。
◆大変不安を感じているが、経済的にどうにもならない。
◆水は購入している。いわき市産は少し食べている。できるだけ県外産を選んでいる。
◆地物を食べさせています。疲れてしまいました。
◆学校給食の牛乳は放射能の不安で停止させているが、学校でも3人しかいないと栄養教諭より嫌みを言われる。

子どもの外遊びについて

子どもの外遊びについて◆気にしないで外遊びをさせているが、海水浴だけはしていない。
◆線量の低い会津などにつれてゆき、遊ばせている。
◆空間線量の低い地域では気にしていないが、公園などは福島市、郡山市、栃木県北部を避けている。
◆外遊びをさせないでいたら、運動能力が著しく落ちてしまったので、運動のために外遊びをさせるようにしている。
◆今でもとても気にしているが、子どもにがまんさせるのはつらすぎて遊びに行かせてしまっている。
◆なるべく外遊びは避けたいが、やむを得ない時は、砂や草木を触れさせないようにしています。
◆外遊びをさせてはいるが、公園に穴を堀り、その下に除染した黒い袋が埋めてあると思うと、長時間遊ばせるのが嫌になる。
◆今では気にしないで外遊びをさせているが……子どもに不安を感じさせないように、楽しい事をしている時は口に出さないようにしている。
◆砂場のある室内型の遊び場は今も利用している。
◆時々外遊びはさせるが、土いじりや軒下などに注意している。
◆家の庭も除染も済んだので、ようやく遊べるようになった。0・2〜0・1マイクロシーベルト。
◆気になるが、遊んではダメとは言えない。友だちと遊んでほしい。
◆帰宅後は、手洗い・うがいをしっかりさせている。

放射能に対する不安

放射能に対する不安現在の福島での生活を、どう感じているかとの質問に、国や県の安全宣言を信じず、今も合計81%もの人々が程度の差こそあれ放射能の不安をもつ。場所によっては復興宣言にさえ不信感が。女の子の将来の結婚や出産に不安を抱く母親も少なくない。

◆第一原発の事故が忘れられてしまうことと、その影響について放送されなくなることが不安です。
◆原発事故後、県外に引っ越すことも考えましたが、仕事の都合でそれも出来ないようなので、昨年郡山に住宅を購入して定住となりました。2人の子どもにとって、その決断が将来どのような影響となってくるのか不安です。
◆子どもが大人になった時、「福島の人とは結婚させられない」など差別されそうで怖いです。
◆福島に住んでいると「仕方ない」と思うことが多くなってきて、だんだん慣れていってしまうのでは……。
◆子どもの将来への不安、体や差別。親も県外へ行った時に、福島県人と言えない。今からでも福島から離れたい。住みたくない。自主避難したい。
◆次世代での遺伝子異常と「福島で育った」と他県の人に知られたときの差別が不安です。
◆今後、甲状腺に異常が見られるのではないかと思っています。現状の放射線量は大丈夫とは言われているが、レベルを低くしただけの事であって、本来は、大丈夫なのかどうか心配です。
◆孫二人のこれからの健康です。水や野菜、果物、米などすべて遠くのものを購入しています。5年が過ぎたせいか、なかなか手に入りません。経済的な面でも出費が大変です。でも、体のことを考えますと、お金よりも、健康を取ります。政府が言っていることが本当なのかどうか、とても不安です。
◆事故当時子どもだった子、また福島で震災にあった人々は、福島を離れた時、政府はその人たちの身体のことをどれだけ考え、追跡調査をし、「もしも」のことがあった時、責任を取るのだろうかと不安に思う。
◆「今さら保養なんて」という見方があること。
◆震災からずっとこの問題を考え続けてきました。最近私自身がとても疲れを感じていて、放射能とか甲状腺とかの言葉を聞いただけで気持ちが悪くなり、資料など全く読めなくなっています。考えようとすると思考停止するみたいで「私病気かな」と思ってしまいます。
◆福島県や、浜通りで作られた食べ物が「復興のため」と県外の人に行きわたること。それを、子どもたちも知らずに食べてしまうこと。「健康を害すること」を「応援」と言って隠していること。気づかないこと。
◆(甲状腺検診の結果が)約一年でA1判定からA2判定になってしまったので、心配しなくても大丈夫と言われても、子どもに今後何があるのがとても心配です。
◆原発廃止にならないこと。川内原発、伊方原発、玄海原発。
◆すぐに体調の変化があるわけではないので、今後も元気に健康に暮していけるのかが心配。仮に体調の変化があったとして、原発事故由来かどうか証明できないと思うので、結局泣き寝入りになってしまうのか、心配。
◆正しい情報はどこで得たらいいのかわからない。モニタリングポストの数値もでたらめなので、本当の値が知りたい。声をあげにくい状態になっていること。福島市内でも高線量の地域の高校に迷いながらも入学した。通学や体育などで被曝量が増えること(福島市渡利)。
◆このままなんとなく、なしくずしになかったことになることは怖いです。
◆不安……というか悩んでいること。あと一年もしないうちに、借り上げ住宅の支援が終わってしまう。離婚したので福島市の家には戻れないが、郡山の実家に戻っても大丈夫か。除染は終わっているが不安はあるし、子どもの進学や転校など、私の意見だけでは決められないほど、成長している。このまま山形で生活できるうちは、山形にいたいと思うが、仕事を探すのが大変…。短期の仕事しかみつからない。

甲状腺検診は今後も必要か

甲状腺検診は今後も必要か「専門家」は甲状腺の過剰な検診をするから、親は不安になると言う。しかし、「沖縄・球美の里」で保養の間に甲状腺検診を受けた子どもの母親たちの63%は、安心のためにこそ球美の里での甲状腺検診を続けてほしいと言う。「他で検査する」が34%。「必要ない」は3%。

◆続けて頂けると助かります。県の2年に一度の検診では間隔が長いと感じるし、説明がその場で聞けないので不安に思うことがあります。県内で実施してくださっている団体があり、そちらでとも思いますが、検診のチャンスは多い方が、学校や仕事の都合に合わせられるのでありがたいです。
◆県でおこなう甲状腺検診は信用できないため、続けてほしい。
◆現実を見つめること、知ることはとても大切だと思うので、検査は必要だと思います。
◆(「検診は母親と本人に不安をもたらすから必要ない」という意見に対して)そんなことは思ったことはありません。これからも甲状腺検診をお願いしたいです。
◆(エコー)写真をいただいたときに本当にほっとしたのを覚えています。ぜひ続けて下さい!! お願いします。お金をお支払いしてでも、診ていただきたいです。
◆甲状腺検診は学校単位でしているので、今後はいらないかもと思うが、学校を卒業した子どもたちが心配です。

保養はこれからも必要か

保養はこれからも必要か汚染された土地から避難できないなら、短期間でも安全な所で子どもを保養させる機会が欲しいと願う人は、実に96%になった。事故の記憶が風化し保養の機会が減少することへの不安が大きい。

◆必要だと思います。甲状腺検診が続いているのは、何かしら(身体への)影響があるということなので。
◆必要だと思います。母子保養もそうですが、子どもたちだけでの保養も。放射能の不安を全く感じることなく過ごす時間が、精神的にも体にも大切だと思うから。
◆必要だと思います。おもいきり、海や川で遊ばせてあげたい!!
◆自然の中でおもいっきり遊んだり、海の水をまちがえて口に入れてもあわてずに過ごせるのは、親にも子にもよいことだと思います。
◆球美の里の保養へ行く前に出ていた原因不明の唇の湿疹が、帰ってきたらなくなっていたので必要だと思います。
◆そろそろ終わりでもいいような? 実際、県内の人はあまり放射能を気にしていません!
◆よくわからない。福島の中でも考えの温度差がかなりあるため。
◆甲状腺の結果がA2に上がってしまったのを見ると、やはり少しでも(福島から)離したい気持ちはあります。
◆必要。私の自宅は山林中にあり、一度は除染がありましたが、線量が高くなりつつあり、山林では遊べないため、参加させたいと考えています。
◆出来る限り、続けてほしいと思います。本来は、県外に転居したいですが、親の年もあるし、仕事が見つかるか分からず、仕方なくここに住んでいるので、少しでも保養で県外に行かせたいと思うからです。
◆必要だと思う。5年経ち、自分の中で5年前よりも事故が風化してきていると感じることがある。でも、毎日誰にも放射能の話をできず、保養で安心して事故のことを話すことができ、精神的にも救われる。
◆必要。県内産の米や牛乳が出されている中学校になってからは、クラスで目立ちたくないので、やむを得ず食べさせている。温かいご飯、冷たい牛乳を飲ませたい気持ちで。ただし、不安はある。定期的にデトックスしたい。
◆必要だと思います。2015年6月、骨髄性白血病になり今も治療中。医師から原発の因果関係は分からないと。私は関係していると思う。
◆事故は全然終わっていないのに、学校では安全と言われています。学校が外での活動を注意しないので、守りきれない。保養は必要だと思います。
◆必要だと思います。県外に住みたくても、そうはいかない親が子どもの健康を心配しながら生活している。
◆母子、父子家庭や、養護施設、里親や貧困家庭が保養を使えるよう、今後も必要だと考えます。
◆必要だと思う。除染してもらっても、子どもたちが過ごす場所すべての放射性物質が取り除かれたわけではなく、この先もずっと低線量被曝をしつづけるから。
◆必要。ロシア研究者の尾松亮氏の新聞記事を読みました。この方だけではないですが、チェルノブイリ事故の教訓が生かされているのか疑問です。子どもたちが、10代、20代になった時、何が起こるのか分からないことだらけなのではと思っています。
◆県外避難ができればいいのかもしれませんが、さまざまな理由からできない方がたくさんいらっしゃいます。短期間でもいいので保養はこれからもあってほしいです。